岐阜県羽島市にある竹鼻南コミュニティセンター(高木和秋館長)は、12年前から地域の防災活動に力を入れています。
羽島市内に活動拠点を置くNPO地盤防災ネットワークの村田芳信さん(岐阜大学客員教授)の指導により、防災勉強会を続けておられ、平成23年には「第一避難所・防災井戸マップ」を作成、全戸配付されました。
これは、村田さんの提案で、地域の地盤高さを色分け表示した標高図を背景にしたマップをつくり、竹鼻南地区の防災上の課題にどのような解決策があるかをみんなで考えようとしたものです。
高木館長や勉強会に参加された区長さんは、マップを見ながら、豪雨の際にはまずは身近な避難所で危険をやり過ごすことが重要と考え、地区ごとに避難させて もらえる場所を探して「第一避難所」としました。災害時に役立つ防災井戸とともに、それらの位置を表し、「第一避難所・防災井戸マップ」を作成しました。

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高木館長(左)と村田さん

また、平成24年5月に、当NPOのスタッフ荒川が岐阜県庁から昭和51年の「9・12豪雨災害」の被災当時の写真を借りてきて、館長さんや区長さんたちに見て頂きました。
すると、区長さんたちは、「これは、○○さんの家の前だ」とか「あのときは○○へ避難した」というように、当時の思い出話とともに見る見るうちに地図上に写真の位置を書き込んでくださいました。

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被災当時の写真の撮影位置をマップに書き込んでくださった区長さんたち

村田さんの、「過去の災害をつたえることは、地域の皆さんに災害に対する意識を持ってもらうのに重要」とのお話しをうけて、高木館長は区長さんとともに地区をまわり、各地区の方から当時の「災害の様子」「避難の様子」「生活の様子」について体験談を伺いました。
たとえば、「水は床上まで浸水したが、水の勢いはなく、雨が止んでも2~3日は水浸しのままだった」という浸水の状況や、「自宅の被害は大きくなかったが、畳に水が浸いてしまったので、眞修寺で避難生活をした」という避難状況などを聞くことができました。

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高木館長(左)は、地域の方に体験談を聞いた

高木館長は、地域の皆さんに過去の災害をつたえるために、「51年災害をつたえるマップ」をつくろうと考えられ、区長さんや各地区の防災委員の皆さんが集まってワークショップを行いました。
ワークショップでは、災害時の写真、市から提供された災害実績図(浸水範囲のマップ)や地区の方々から伺った体験談などから、標高図マップの上に当時の様子を書き込みました。
そうしてできあがったマップは、「51年災害をつたえるマップ」です。
高木館長は、この「51年災害をつたえるマップ」を印刷し、各戸配付されました。ただ配るだけではなく、地区ごとの会合や防災訓練で、マップの内容を説明し過去にこんな災害があったので、これからも気をつけようといった説明を行われました。

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防災訓練でのマップ説明

過去の災害を写真やマップでつたえることは、身近なことと理解してもらえるので、災害に備えてどうすればよいかを考えるよい機会になったのでは、と高木館長は話されます。

取材時の情報になります
ライター:荒川宏(2013年08月26日)